人権ワークショップ 座談会レポート

インターネットによる人権侵害×県立小出高校1年生
友だちのために、自分のために。
「わたしたちができること」を考えた

知らないところで自分の情報や写真が晒されたり、根拠のない悪口を言われたり。インターネットによる人権侵害は世代を問わず広がり、学校生活も脅かされるようになっている。高校生のほとんどがスマホを持ち、所有率は90%以上という調査結果も示される現在、どのようにSNSやインターネットと付き合ったらいいのか。新潟県立小出高等学校(魚沼市)の1年生115名がワークショップに参加した。

(タイムスケジュール)
13:30~
オリエンテーション・アイスブレイク(後述の動画視聴に触れて)
13:45~
レクチャー「インターネットと人権を取り巻く現状」
13:55~
グループ対話「インターネットとの向き合い方を考える」

インターネットやSNSには
どんな課題があるのか、話し合った

体育館に集まった1年生を前に、今回のワークショップを導くNPO法人みらいずworksの挨拶から始まった。司会進行の中村華子さんが目的を説明。「インターネットの人権侵害について、取り巻く現状や課題を理解すること。そして自分たちに何ができるかアイデア考えることです」。続けて、大切にしたい心構えが3つ示された。互いに助け合うこと(サポート)、失敗を恐れないこと(チャレンジ)、そして楽しむこと(エンジョイ)。まずは女子高校生3人がモデルになった動画を視聴した。

出典:法務省・全国人権擁護委員連合会 人権啓発動画「『誰か』のことじゃない。」インターネット編

友だちの部屋で撮った自分たちの写真を、軽い気持ちでSNSにアップしてしまった女子高校生。動画は途中で停止され「この後、何が起こると思う?」。中村さんの問いかけに「SNSで顔が出回ってしまう」「スクショされて写真が拡散されてしまうと思う」と高校生。続きは、ほぼその通り。知らない人のアカウントで写真が投稿され、写っていた制服から名前が特定され‥。ただ彼女たちはすぐ親に相談。法務局に相談して、最終的に投稿は消された。

「『誰か』のことじゃない」。動画のタイトルが、改めて高校生に問題の身近さを問いかけた。「では、ここからはグループに分かれて、インターネットとどう向き合ったらいいかを考えてみましょう」。各グループには大きな模造紙と水性ペンが配られた。「インターネットやSNSを使う中で「あってほしいこと」「あってほしくないこと」を話し合い、書いてみましょう」。

悪口、いじめ、誹謗中傷、差別、仲間はずれ、個人情報の流出、炎上、拡散、不登校、デジタルタトゥー、乗っ取り、アンチコメント、「チクチク言葉」。「あってほしくないこと」には不穏な言葉が並び、中には拡散→炎上→いじめ→不登校と、悪いことが連鎖する恐れを書き込んだ班もあった。一方、「あってほしいこと」には、生徒らが学校で学んだという「ふわふわ言葉」が並んだ。知識が増える、友達が増える、癒し、思いやり、気遣い、肯定的なコメント、勇気づけるコメント、理解、やさしさ、応援コメ、高評価、平和、正しい情報、笑い、喜び、「いいね」。前向きな言葉や、やさしい気持ちが見えた。

今日からできることがある。
思いと第一歩を共有して

休憩を挟んでまとめに入った。今度は「あってほしくないこと」に対して自分たちができること、「あってほしいこと」の中でも特に大事にしたいことをグループ内で確認し、模造紙に書き加えた。「相手の気持ちを考える」「悪口を言わない」「正しい知識を身に付ける」「本当かどうかを調べる」「SNSに載せる前に載せていいかどうかを考える」。「自分たちにできること」はどれも具体的だった。

続けて、全員がほかのグループの成果を見て回り、「いいな」と思ったものには星マークが付けられた。色とりどりの言葉が再び、輝いた。さらに「では、自分たちは明日から何ができるのか」。中村さんの問いかけに、一人ひとりがシートに書く時間。静かなひとときの後は、グループ内で発表。すると声明ごとに自然と拍手が起こった。拍手はほかのグループにも伝わり、「いいね」の輪が学年全体に広がった。

シートに書かれた文章は、相手を思いやる心と示唆に満ちていた。「発言や投稿に気をつけること、相手を思いやることをみんなと共有できてよかった」「本当に載せていいかどうかを考えるのはもちろん、友だちに対しても間違っていると思ったら勇気を持って伝えたい」「悪口と影口は違うなど、人によって捉え方が異なることを知った。悪口に含まれることも、直接言えば悪口にならなかったりする。インターネットも使い方ではポジティブになる。相手の気分を良くしたり、みんなの雰囲気を盛り上げたりすることに使っていきたい」「ポジティブな言葉をたくさん言っていきたい」。中村さんは、「インターネット人権侵害と聞くと、最初は怖い、不安という声もあったけれども、ポジティブに思いやりをもって接するとか、つながりをもてるといった、前向きな意見がたくさんあった。」「自分らしく、みんなとともに考えることができた時間だった。」と振り返る。

小出高校では「居心地のいい学校」という目標が掲げられ、「居心地」には「安心できる環境があること」も含まれているという。インターネットやSNSを「正しく」使うこと。それが、安心できる環境づくりの第一歩だ。スマホやタブレットがあたり前にそばにある環境に生まれ育ってきた高校生たちが、メリットとデメリットを共有し、明日からできることを見つけたワークショップ。インターネットによる人権侵害を、リアルに、自分ごととして考えるきっかけとなった。

あなたなら、どう使いますか?